近年、大規模な自然災害が頻発し、停電への備えがますます重要になっています。マンションにおける非常用発電機は、停電時に住民の安全確保と生活の維持をサポートする不可欠な設備です。
建物の規模や用途によっては、法令で非常電源の設置や定期的な点検が義務付けられており、マンションもその対象に含まれます。
本記事では、マンション管理組合の理事や役員の方に向けて、非常用発電機の基礎知識や必要性、種類・方式、関連する法令、設置する際の注意点などを解説します。
目次
非常用発電機とは

非常用発電機とは、地震や台風などの自然災害や火災により停電が発生した際、通常の電力供給に代わって非常用の電力を供給する機器です。
大規模な業務施設やマンションなどでは、火災警報、消火栓、スプリンクラー、排煙機などの防災設備が多数備えられています。
これらの設備は、建築基準法や消防法などの法令により、停電時にも防災設備を稼働できるよう、非常電源の設置が義務付けられています。
消防法施行規則第12条では、次の4種類が非常電源として定められています。
- 非常電源専用受電設備
- 自家発電設備
- 蓄電池設備
- 燃料電池設備
このうち、延べ面積1,000㎡以上の建物では、非常電源として認められているのは自家発電設備、蓄電池設備、燃料電池設備の3種類です。
非常用発電機の設置基準に関連する法令

次に、非常用発電機の設置基準に関する主な法令を紹介します。
消防法
消防法第17条では、防火対象物の用途や規模に応じて、政令で定める技術上の基準に従い、消防用設備等を設置することが義務付けられています。
そのうち電源を必要とするものは、消火設備(屋内消火栓設備・スプリンクラー設備など)や警報設備(自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備など)です。
また、消防法施行令第11条および12条では、火災時に常用電源が停止した場合でも、消防用設備が正常に稼働するよう、非常電源の設置が求められています。
このうち延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物(不特定多数の人が出入りする施設)には、自家発電設備、蓄電池設備、または燃料電池設備の設置が必要です。
対象となるのは、大規模なマンション、商業施設、学校、病院、高齢者福祉施設、工場などです。
建築基準法
建築基準法では、特殊建築物(不特定多数の方の利用が想定される建物など)に対し、排煙設備や非常用照明装置など、建築設備を設置することが義務付けられています。
そのうち、防災設備としての機能を持つものについては、災害などで常用電源が遮断された場合に備え、予備電源の設置が必要です。
対象となる建物としては、学校、病院、ホテル、旅館、共同住宅、映画館、百貨店などがあげられます。
マンションに非常用発電機は必要?

建築基準法や消防法において、非常電源(非常用発電機)の設置が求められるのは、主に大規模な業務施設や商業施設などです。それでは、マンションに非常用発電機は必要なのでしょうか。以下では、非常用発電機の設置が必要ととされる理由について解説します。
マンションに非常用発電機が必要な理由
建築基準法第34条では、高さ31mを超える建築物には非常用昇降機(エレベーター)の設置が義務付けられており、さらに建築基準法施行令第129条では予備電源の設置も義務化されています。
つまり、高さ31mを超えるタワーマンションには、非常用発電機の設置が必要となります。
また、マンションにテナントが入居している場合は、不特定多数の人が利用する特殊建築物に該当するため、防災設備としての機能を持つ建築設備には予備電源の設置が必要です。
消防法でも、不特定多数の人が利用する述べ床面積1,000㎡以上の特定防火対象物は、非常電源の設置対象に含まれます。
管理組合のBCP対策として
近年では、企業のBCP(事業継続計画)対策の一環として、非常用発電機を設置するケースが増えています。
BCPとは、自然災害や緊急事態に備え、緊急時の対応手順や手段をあらかじめ策定しておく行動計画や施策のことです。
一般的な防災対策とは異なり、BCPは事業資産の損害を最小限に抑え、事業の継続と早期復旧を目的としている点が特徴です。
このBCPの考え方は、マンションの管理運営にも応用できます。
マンションの規模などによっては、建築基準法や消防法における非常電源の設置義務が適用されない場合もあります。
しかし、大規模災害後にライフラインを維持するためには、マンション管理においても、類似の対策を講じる必要性は一層高まっているといえるでしょう。
給水設備等の維持
多数の人が暮らすマンションで停電が発生した場合、深刻な問題となるのが給水の確保です。
マンションでは各戸に給水する方法として、「受水槽式」と「直結増圧式」が一般的です。
このうち「直結増圧式」は電力を使用するため、停電時には上階層への給水圧力が低下し、断水の恐れがあります。
停電時における給水設備の維持は、建築基準法や消防法によって義務化されているわけではありません。
しかし、防災対策の一環として非常用発電機を設置し、非常時にも給水ポンプや照明、エレベーター、機械式駐車場などを稼働できるよう備えているマンションも存在します。
非常用発電機の目的

非常用発電機は、その目的に応じて「防災用」「保安用」「防災・保安兼用」の3種類に分類されます。これらの種類について、以下に詳しく解説します。
防災用の非常用発電機
災害時にのみ作動し、停電信号を検知してから40秒以内に、自動で消防用設備や建築設備などの防災負荷へ電力を供給する発電機を指します。
防災用の非常用発電機の設置が義務付けられている主な施設には、病院、高齢者施設、オフィスビル、ホテル、百貨店など、不特定多数の人が出入りする場所や、災害時に特に避難・安全確保が求められる施設があげられます。
火災などの非常時に被害を最小限に抑えるうえで、大きな役割を果たします。
保安用の非常用発電機
災害などによって停電が発生した際に備え、設置者が自主的に導入するバックアップ電源を指します。
例えば、大量の食品を冷凍・冷蔵している店舗や施設では、停電により冷凍庫や冷蔵庫の稼働が止まると、食品が傷み、廃棄せざるを得なくなります。
こうした事態を防ぐために、保安負荷のみに対応した非常用発電機を設置します。
消防法などの法令では設置義務はありませんが、企業のBCP(事業継続計画)対策の観点から、設置が推奨されています。
防災・保安兼用の非常用発電機
上記で説明した防災負荷と保安負荷の両方に対応できる非常用発電機を指します。
防災用発電機に比べて、より大きな電力供給能力(出力容量)が求められる点に注意が必要です。
防災負荷の運転が優先されるため、災害時には保安負荷用の回路を切り離せるよう設計されているタイプもあります。
非常電源の種類

非常電源には、いくつかの種類があります。以下に、それぞれの種類の詳細を解説します。
ガスタービンエンジン式
ガスタービンエンジン式は、ガスを利用してエンジンを駆動する方式です。
後述するディーゼルエンジン式に比べて、稼働時の騒音や振動、燃焼時に発生する黒煙が少ない点がメリットです。また、機械本体が小型であるため、設置スペースが限られている場合に適しています。
一方で、本体価格や燃料単価が高く、メンテナンス費用もかかる点がデメリットです。また、排気ダクトや給気用ガラリの設置など、大規模な工事が必要になる場合もあります。
ディーゼルエンジン式
非常用発電機の多くを占めるのがディーゼルエンジン式で、燃料の爆発による熱エネルギーを利用して電力を発生させます。
小型から大型まで幅広い機種があり、施設の規模に応じた発電機を選択できる点が特徴です。
メリットとしては、ガスタービン式に比べて本体価格や燃料単価が安く、発電効率が高いことや、メンテナンスが容易であることなどがあげられます。
一方で、振動や騒音が大きく、排気煙の発生も多いことがデメリットです。また、冷却装置を設置する必要があるため、設置場所には一定の広さが求められます。
ハイブリッド型
ガスタービン式またはディーゼル式に蓄電池を組み合わせた非常用発電機です。
燃料を使用している間に蓄電を行い、充電が完了すると蓄電池から電力を供給します。長時間の電力供給が可能となり、燃料補給の手間を軽減できる点がメリットです。
さらに、レギュラーガソリンやLPガスなど、複数の燃料が使用できるタイプもあります。
LPガスは長期保管しても劣化しにくく、災害時に有効な燃料とされています。手入れやメンテナンスも簡単であることに加え、パソコンやスマートフォンに安定した電力を供給できる点もメリットです。
太陽光発電
補足として、太陽光発電をあげることができます。
太陽光発電は、停電時に自家発電して電力を消費できる非常電源となり、蓄電池と併用することで非常用の電力を蓄えることも可能です。
発電量は天候に左右され、夜間は発電できないという弱点もありますが、大規模な災害では停電が長期化する恐れもあります。太陽光発電は、そのような場合の備えとしても安心です。
非常用発電機を設置した際の注意点

非常用発電機を設置した際は、定期的な点検が必要です。以下に、その詳細を解説します。
定期点検が必要な理由
エンジンによって発電を行う非常用発電機は、定期的にメンテナンスを行わないと正常に稼働せず、重大な事故に繋がる恐れがあります。せっかく非常用発電機を備えていても、災害時に作動しなければ意味がありません。
一般社団法人 日本内燃力発電設備協会では、東日本大震災の発生後に、自家用発電設備の調査結果を報告しています。
同協会の「内発協ニュース/2012年3月号」によると、調査対象地域における防災用自家発電機4,811台のうち、不始動あるいは停止したのは計233台です。
このうち60台は、燃料切れや津波による停止を除いた、装置および付帯設備の異常によって停止しています。
「非常時に発電機が作動しない」という事態を避けるためにも、機器の定期点検やメンテナンスが重要です。
参考:「東日本大震災における自家用発電設備の稼働・被災状況」一般社団法人 日本内燃力発電設備協会『内発協ニュース』2012年3月号
定期点検は義務化されている
非常用発電機の定期点検は、建築基準法、消防法、電気事業法において、以下のように定められています。
建築基準法による点検
点検のタイミングは、概ね6ヵ月から1年に1回です。点検義務のある建築物に設置されている非常用発電機が対象で、一級・二級建築士・建築設備検査員・防火設備検査員などの有資格者が、主に以下の内容を点検します。
- 建築物や建築設備などが法律に適合しているか
- 建物内の照明に異常がないか
- 蓄電池触媒栓の期限切れや液漏れがないか
消防法による点検
機器点検は6ヵ月に1回と定められており、点検の内容は以下の通りです。
- 消防用設備等の機器が適正に設置されているか
- 機器に損傷はないか
- その他、見た目よって確認できる異常がないか
総合点検は1年に1回実施され、消防用設備等の機器の全体または一部を作動させるか使用することで、総合的な機能を確認します。
実際の動作環境に近い条件で運転性能を確認する「負荷点検および内部観察等の点検」も1年に1回実施されます。
しかし、平成30年施行の自家発電設備の点検方法の改正により、年に1回「予防的な保全策」が実施されている場合には、6年に1回の実施でも差し支えないとされています。
負荷点検および内部観察等の点検は、自家発電設備専門技術者、消防設備士、消防設備点検資格者が実施します。
電気事業法による点検
月次点検は1ヵ月に1回実施され、発電機や電圧を制御する設備に目視で異常がないかを確認します。
年次点検は年に1回実施され、主に以下の内容を点検します。
- 各装置の動作に異常がないか
- 内部にある蓄電池に電解液等の漏れがないか
- 部品の接続箇所や地面との接地部分に緩みがないか
いずれも、電気主任技術者または電気管理技術者が点検を実施します。
レジルの「マンション防災サービス」なら、マンション全体の防災対策が可能

地震や台風など災害が頻発する日本において、非常用発電機はマンションの防災対策としても非常に有効です。
万が一の際に防災設備を稼働できるほか、給水装置やエレベーターを動かすことで、ライフラインの維持にも貢献します。
とはいえ、非常用発電機の設置やメンテナンスは負担が大きそう・・・といった不安を抱かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこでご紹介するのが、太陽光発電システムと蓄電池を備えられる「マンション防災サービス」です。
マンション一括受電サービスをはじめとしたエネルギー事業を展開するレジルでは、マンション防災対策を包括的に行える「マンション防災サービス」を提供しています。以下に、その特長を紹介します。
◇災害発生時にも電力を確保できる
地震や台風などの災害が発生した際、近年では「自宅にとどまる避難」も選択肢としてあげられます。しかし、停電が発生すると、マンションでは以下のようなリスクが生じます。
・エレベーターが停止し、買い物や高齢者の移動などが困難になる
・断水よって水道やトイレが使えなくなると、不便なうえに衛生面にも不安が生じる
・機械式駐車場が停止して車を出せなくなると、病院への搬送や物資の調達ができなくなる
大規模災害の場合、停電が長期化する恐れもあり、生活の維持が困難になります。
レジルの「マンション防災サービス」なら、太陽光発電システムと蓄電池を活用することで、災害における停電時にも共用部の設備を稼働させることが可能です。
エレベーターや給水ポンプ(水道・トイレ)、機械式駐車場などに電力を供給し、マンション内の生活維持をサポートします。
※災害時の破損などにより、電力供給のみで設備が稼働しない場合は、稼働保証の対象外です。
※ご契約内容により稼働対象となる設備は異なる場合がございます。
◇初期費用0円で設置できる
各設備の設置および工事費用はレジルが負担するため、お客さまは初期費用の負担なくサービスを導入いただくことが可能です。
また、メンテナンス費用や保守・運用費用は電気料金に含まれているため、機器の点検や修理などによる追加費用は発生しません。
メンテナンスや運用管理、設備の故障対応などもレジルが行うため、安心してご利用いただけます。
■マンションに非常用発電機があれば停電時も安心!
マンション全体が停電すると、複数のライフラインが使用できなくなります。
自宅で避難生活を送ることも困難になるため、非常電源の確保は非常に重要といえます。
そこで、災害時に備えた非常用発電機を設置しておけば、いざというときにも安心です。
レジルでは、初期費用が不要で管理組合の負担の少ない「マンション防災サービス」を通じて、災害時の共用部に電力を提供します。
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- 最終更新日:
※この記事は2025年6月6日時点の情報をもとに執筆しました。

